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「資源調達における外部組織との関係について」 ~民本 裕貴~

2020年03月01日

皆さん、こんにちは。

A&Mコンサルト、専門コンサルタントの民本裕貴です。

 

皆さんは組織間関係論における『資源依存モデル』という言葉をご存じでしょうか?

すべての企業は、多かれ少なかれ外部から資源を調達し、それをモノやサービスに変換し、世の中に価値を提供しています。

すなわち、企業が調達、使用する諸資源を提供する外部組織との関係性というのは、企業活動を継続する上で非常に重要な要素であるということが言えます。

 

 

実際に私がお手伝をさせていただいているお客様の中でも、調達先企業との関係性から価格交渉が難航している場合や、改善に協力を仰ぐ際に強くお願いすることができない、などの問題を目の当たりにしてきました。

 

そこで、『資源依存モデル』では、「組織間における資源の取引に着目し、企業や組織がどのように資源の取引関係をマネジメントすべきか」について分析します。

 

そもそも、資源依存度(企業や組織が外部資源に依存する程度)のはどのように決まるのでしょうか。

資源依存度の決定要因には、大きく分けて以下の3つに分けられます。

 

 

1.資源の重要性

企業の製品やサービスの生産にとって重要性が高い資源であれば、その資源の外部組織(調達先)に対する依存度は当然高くなります。さらに、資源の重要性を決定するものは、以下の2つに分類されます。

 

1)資源の相対的規模

企業が外部組織と取引するすべての資源のうち、特定の資源が占める比率。

例)金属加工会社における金属材料、木材加工会社における木材など

 

2)資源の必須性

企業にとって取引量は少なくても、その資源がなければ企業活動そのものが成り立たない資源。

例)電気、水道など

 

2.外部組織による資源配分と使用に対する自由裁量の程度

外部組織が、ある資源に対して、その配分と使用法を自由に決定できる裁量程度のことです。これが大きい場合、ある資源配分の判断に外部組織が介入しやすくなるため、企業の独立的な判断裁量が低下し、外部組織への依存度が上昇します。

 

3.資源コントロールの集中度

企業が製品やサービスの生産に必要な資源調達先の集中度合いのことで、企業がある資源について1つだけの外部組織から調達している場合、その外部組織に対する資源依存度は当然、高くなります。

例)1社購買などが該当する

 

上記の3点から、外部組織に対する資源依存度が決定されます。

外部組織に対する資源依存度が高ければ高いほど、その外部組織は自社に対してパワーを持つことになります。例えば、協力会社(サプライヤ)に対する資源依存度が高い場合、下記のデメリットが考えられます。

 

・協力会社がコスト交渉に応じにくくなる

・協力会社が急な倒産や方針転換、被災した場合、自社の企業活動が継続困難に陥る

 

もちろん、1社購買では数量割引による短期的な単価低減は見込めますが、自動車業界における長期に渡るコスト交渉(定期的な値下げ交渉の徹底)から考えれば、複数社による競争が長期的な調達単価の低減に寄与していると考えられます。

 

それでは、企業は自律性を確保するためにはどうすればよいのでしょうか。資源依存関係に対するマネジメント(対応策やアプローチ)は、以下のようなものが挙げられます。

 

1.資源依存関係そのものを回避する方法

1)代替的取引関係の開発

ある資源の調達について、調達先を複数に分散させることで、相対的に依存度を低下させる方法。また、同じ機能をもつ資源に調達資源を変更することで依存度を下げることが可能となるもの。

例)複数社購買の推進、VA/VEによる市販品の活用検討など

 

2)多角化

異なる事業分野に進出し、新たな資源を調達する割合を高めることにより、相対的に特定事業や必須資源に対する依存度を低下させる方法。

 

2.資源依存関係を容認しつつ、他組織からの支配を回避する方法

資源依存関係そのものを変えることが困難な場合、依存による影響を最小限に抑える方法をとることになります。具体的には、下記の3つが挙げられます。

 

1)交渉

組織間取引において、取引に関する合意を意図した折衝を行い、折衝を通じて将来の調達価格や企業行動に対して双方が満足する決定を行うこと。

例)コストテーブルや値下げ基準、コスト交渉の進め方などについてあらかじめ合意しておく。

 

2)包摂

組織のリーダーシップ構造に、利害関係者の代表を参加させること。

例)取締役の一人が、資源依存関係になる外部組織の取締役に就任することで、両社の利害関係の調整や、経営政策や意思決定に影響を与えられるようにする。

 

3)結託

共通の目的を達成するために、2つ以上の組織が連携すること。

例)複数企業で結託し、製品デザインや技術仕様を統一させ、事実上の業界標準(デファクトスタンダード)をつくることで、生産に必要な資源調達先を増やす。

 

 

以上が、『資源依存モデル』です。

 

特に調達・購買部門においては、自社の諸資源が外部組織に対してどのくらい依存しているのか、把握に務めることも重要な仕事の一つだと思います。

 

皆さまの企業でも外部組織に依存している資源はありませんか?

一度、調達資源を分析し、潜在的な調達リスクを抱えた資源がないか洗い出してみると対策が見えてくるかもしれません。

 

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。