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【組織設計における5つ設計原理とは】 ~民本 裕貴~

2022年05月06日

こんにちは、専門コンサルタントの民本です。

 

 

今回は、会社という組織構造を検討する際に考慮すべき重要な5つの原理についてお話したいと思います。

 

 

そもそも、組織とはどのようなものを指すのでしょうか。

 

定義は様々あるかと思いますが、会社組織という枠組みで考えた場合・・・

 

「一定の“共通目標”を達成するため、構成メンバーごとに役割や機能的に分化・統合された集団」

 

を指すことが一般的な認識であると考えられます。

 

また組織構造とは、その組織における分業と調整の体系を目に見える形で明確化したものです。

 

会社の組織設計において、この組織構造はハード的な役割を果たします。

 

会社は組織を分業化し、役割を与え、それぞれが仕事を遂行することでお客様へ付加価値を提供するに至りますが、

 

その付加価値を生む活動を実行するのは、そこで働く従業員の方々です。

 

したがって、組織の設計においては組織構造だけではなく、そこで働く人々に対するソフト的なアプローチも必要となります。

 

より具体的には、モチベーション管理、リーダーシップ養成などです。

 

この「組織構造の設計(ハード)」「組織行動論的な対応(ソフト)」の互いに補うことにより、相乗効果を発揮し、

 

組織の活動効率を高められると考えられています。

 

 

それでは、本題である会社の組織構造の5つの設計原理について説明します。

 

 

1.専門化の原則

 

“専門化”とは、組織の活動が特殊化された役割に分割された状態を示し、“分業化”とほぼ同様の意味を持ちます。

 

組織を専門化(分業化)することによって、特定の業務に専念することが可能となり、各部門や担当者は各々が得意とする知識・能力を

 

十分に生かすことができ、また会社としてもリソースの集中利用が可能となるため、経済的です。

 

職能別組織(営業部、製造部、技術部、購買部など、役割に応じて分業化された組織)は、専門化の原則に従って

 

組織構造が設計されていると言えますね(この原則は皆さんも感覚的にわかり易いかと思います)。

 

 

2.権限責任一致の原則

 

各組織構成員に与えられる権限の大きさが、担当する職務に相応しているとともに、それと同等の責任が負わされなければならない、という原則です。

 

あるアウトプットを出すために、上司が部下に指示を行う「権限」が必要ですが、その権限に見合う成果を出す「責任」が発生し、

 

その「権限」と「責任」は同等となるよう組織設計すべき、という原則です。

 

これが例えば「権限」>「責任」となっている場合、権限だけが大きく、成果は伴わないため、組織内での無駄遣いが増えたり、

 

非効率的な業務命令に従わざるを得ないといった状況を引き起こします。

 

 

3.統制範囲の原則(スパンオブコントロール)

 

1名の上司が有効に指揮監督可能な直接の部下の人数は限られており、これを超えた人数の部下を持った上司の管理効率が低下する、という原則です。

 

会社にとって、上司ひとりあたりが管理する部下の数は多い方が管理者の数を削減でき、その分のリソースは売上を上げる活動に割くことができます。

 

そのため、会社としては、いかに上司ひとりあたりの統制範囲(指揮監督可能な人数)を拡げることが出来るかを考える必要があります。

 

 

対応の例としては・・・

 

・上司の例外処理能力を高める。

 

・下位メンバーの知識や熟練を高め、例外事項への適切な判断能力を高める。

 

・作業の標準化を進める。

 

といった対応が考えられます。

 

 

4.命令統一性の原則

 

組織の秩序を維持するため、役職の上下関係において各組織の構成員は常に特定の1人の上司から命令を受けるようにしなければならない、という原則です。

 

例えば、ある社員Aさんに対して、B係長からは「外回りをしろ!」といわれるが、別のC係長からは「社内の書類を優先しろ!」

 

といった命令を受けた場合、その命令系統が曖昧であればAさんはどちらの命令を優先すべきか悩む、または確認するといったプロセスが必要となり、

 

判断に遅れが生じます。

 

基本的に、職能別組織において指揮命令系統が階層構造で設定されていれば、このような事態は起こりづらいですが、マトリクス型組織

 

(職能別組織と事業部制組織の組み合わせたような組織形態)においては、この原則に反することになるため、

 

そのような組織体制を検討する場合には、細心の注意が必要です。

 

 

5.例外の原則

 

組織における意思決定には3つの階層があり、“業務的意思決定”、“管理的意思決定”、“戦略的意思決定”が存在します。

 

1)業務的意思決定

 

ロワーマネジメントが主に行う意思決定で、日常的な経営活動の能率や収益性を最大化するための「短期的・定型的」な意思決定。

 

2)管理的意思決定

 

ミドルマネジメントが主に行う意思決定で、経営戦略を実行するために必要な資源の調達等の「中期的・半定型的」な意思決定。

 

3)戦略的意思決定

 

トップマネジメント(経営者)が主に行う意思決定で、今後の会社の戦略などについての「長期的・非定型的」な意思決定。

 

といった違いがあります。

 

 

いずれも会社にとって必要な意思決定ですが、特に“戦略的意思決定”が重要で、経営者は業務的意思決定や管理的意思決定から解放され、

 

戦略的意思決定に専念できるようにする必要があります。

 

例外の原則は、経営者が日常反復的な業務を下位レベルの者に委譲し、例外的な業務(戦略的意思決定および非定型的意思決定)に専念すべきである、

 

という原則です。

 

会社の経営者が日常業務に忙殺され、長期的な会社の方針や戦略、計画を考えることが後回しになってしまっていると、

 

変化を見逃し結果的に衰退していくことに繋がります。

 

 

以上が、組織構造の5つの設計原理になります。

 

会社の将来のため、組織再編等を行う際は、このような原理も意識して組織構造を検討されてみてはいかがでしょうか。

 

お読みいただき、ありがとうございました。