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【設計開発部門における風土の在り方】 ~中山 聡史~
2020年01月06日
今の設計開発部門は多くの仕事をかかえており、更には「働き方改革」で効率化を同時に検討しなければならない時代にきています。
その組織に属するメンバー、=設計者の多くは疲弊しているのが、現状です。
私が、さまざまな企業様をご支援させていただく中で、プロジェクトに出席する設計者の顔に明らかな疲れが見て取れます(そんな状況で課題を出すのは心苦しいのが本音です)。
この状況を打開すべく、まずは設計者の負荷を少しでも軽くしてあげなければなりません。
では、今、設計開発部門が抱えている業務の中で、本当に設計者が実施しなければならない内容はどれくらいあるのでしょうか。
さまざまなドキュメント造りはもちろん、取扱説明書、検査項目書、顧客とのやり取りなど、多くの業務を設計者がこなしています。会社として、設計開発部門が実施すべきことなのか、を今一度明確にする必要があるでしょう。
例えば、取扱説明書です。取扱説明書には、様々な製品の機能に関すること、性能に関することが記載されています。しかし、記載されている内容は設計前に作成する仕様書に記載されている内容であり、ある程度製品の内容を知っていれば、作成することが可能です。
したがって、設計者が作成しなくとも、他の部門でも作成が可能ということです。例えば、サービス部門が作成し、その内容で問題がないかを設計部門が確認するといった仕組みです。多くの自動車メーカーでは、上記のような役割分担になっており、設計者しか知り得ない詳細な製品内容のみ設計者が確認しています。
もちろん、他の部門が暇をしているというわけではありませんが、今現在はあまりにも設計開発部門に負荷が集中しすぎています。私が、改善を進める場合、まずは設計開発部門で抱えている業務内容は何があるのかを明確にします。私はその作業を「業務ばらし」と呼んでいます。
業務ばらしを実施した上で、1つ1つの業務内容に対し、作成の役割分担を再度振り分けていきます。役割分担が決まっておらず、出来る人が実施するというような決め方の企業様が意外と多いのです。
それでは、出来る人、知識がある人、しいては、情報を有している部門に負荷が集中します。「業務ばらし」を実施するだけでも、業務の視える化につながり、ムダな仕事を省くことにもつながるので、実践してみてください。
設計者の負荷を取るだけで、設計開発部門が明るく、はつらつと仕事ができるかというと、まだまだそうではありません。今まで染みついた風土はなかなか改革できないのです。そのため、次に説明する事も実施しなければなりません。それは風土の改革です。当たり前のことを継続的にやり続け、利益を確保するための企業風土造りには2つの要素があります。
1.問題解決方法
現在の世の中は企業が売りたいモノを作るわけではなく、売れるモノを作る必要があります。しかし、商品はモノであり、なんらかの欠点が発生する場合があります。その時の問題解決方法が重要です。
問題が発生した時に問題点の原因を探し、対策の検討を実施するが、結局「絵に書いた餅」や「机上の空論」となり、「①対策が複雑すぎる」、もしくは「②対策をやりきる事ができない」事が多いのです。この2つの問題はなぜ起きるのでしょうか。
1) 対策が複雑すぎる
問題解決の担当者は対策を複雑にし、自分にしかできない解決策を導き出す傾向にあるため、管理者が必ず軌道修正する必要があります。
対策をできる限りシンプルにし、同じ系統の問題が発生した場合には同じ解決法を使えるよう検討しておく必要があります。標準化、水平(横)展開の方法を練りながら検討すること。
2) 対策をやりきる事ができていない
対策をやりきる特別な方法はないのです。問題の解決を担当者だけに任せておくと、他の業務が忙しいなど「やりきる事」ができない場合が多いのです。
リーダー(管理者)は対策が完了するまで担当者の進捗管理を行うこと。それが「やりきる事」に繋がります。チームで問題を解決していくという意識が必要です。
2.継続性
問題が発生しないようなモノ造りのプロセスを継続的に実施するには、企業風土が重要になります。
1) 失敗を奨励する
1つの失敗を個人のミスと捉えず、業務を行う上でのプロセスに問題があると捉える。その上で問題を解決し、プロセス化(標準化)、さらには水平展開を実施する。
2) 「なぜ」を繰り返す
現場では小さな問題がたくさん起こっています。それに対し、メンバー同士で「なぜ?」を繰り返しながら原因を考えていくこと。
3) すぐに行動する
結果を想定しながら、まずは「やってみる」精神が存在する。(結果を想定しなければ、行動してはいけない)
設計開発部門は非常に厳しい環境下にありますが、設計者同士がお互いを高めあうような組織であるべきであり、いつまでも個人商店ではいけません。個人商店にならないよう、問題解決も重要ですし、その上で、継続性を持ちながら、小さな失敗は奨励してあげる風土が重要です。
細かいミスについて叱責するような風土であってはいけません。むしろ失敗をチャンスととらえ、設計者自身の成長につなげるよう、ミスの原因を設計者と一緒に考え、仕事の進め方を教えてあげることが、良い風土に繋がっていくでしょう。
上記のような改善を続けて、「設計者の疲れた顔」がいつか「元気な顔」になるようにしていきましょう。